友情の軍手 〜北海道の旅後編〜

 さて、続き。続きと言っても、すでに一ヶ月近く前のことを、一週間振りに書いておりますので、ここまでの経過をお忘れの方は「前編」もどうぞ。
 さてさて前述したように、講演当日も午前中は青野氏の案内で近隣の遺跡を見学しておりました。しかし気が付くと、もうお昼過ぎ。講演は何時からだっけ?あ、午後1時!
 といいつつ、結局講演開始直前まで、2人でお蕎すすってました。もちろんこの間に、打ち合わせはしましたよ。とりあえず対談のはじめに、二人でファイティングポーズとること、とかね。
 でも、私に不安はありませんでした。講演だろうと対談だろうと、私は私の用意したものを出すだけですし、どう転んでも、きちんと彼が拾ってくれるという信頼がありましたからね。

 で、その実際の講演と対談の様子は、青野氏が自身のFacebookに書いておられますので、どうぞそちらを…とも言うのもなんですので、かいつまんで。

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 まずは、私の講演。言うまでもなく、海のない長野県。そしてその中心に近い八ヶ岳の近辺では、「縄文王国」とまで呼ばれるほど、縄文の遺跡が濃密に分布し、数々の優品を誇ります。
 普通に考えれば、海岸の方が遥かに食料の種類も豊富でしょう。おまけに八ヶ岳では、冬の寒さも厳しいはず。なのに、この山深い信州で、なぜ縄文文化が栄えたのか?
 これは、私を含め多くの研究者が抱く疑問であると同時に、答えるのに窮する問題です。もちろん答えは出せません。でも、それにつながる可能性を見出そうとするプロセスや、その謎解きの面白さを紹介できれば、そんな思いで発表しました。

 
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戦いの前のファイティングポーズ。やらせか?

 そして、続く対談ですが、これはもう基本青野さん任せ。相手が何を言い出すか、お互いによく知らないし。
 まぁ前半は、笑いながらそれぞれの自慢合戦、つまりそれぞれの特殊性を紹介。やはり同じ縄文時代でも、標高800mを超す山間部と海岸沿いの伊達市ではかなりの違いが見出せることを、しゃべってる私たちも実感(笑)。
 その後は、それぞれの持つ潜在的な資源やその利用の話。長野県の場合、黒曜石がそれですね。伊達市、というか噴火湾周辺では豊かな海産資源があります。他にも、新潟富山の翡翠、銚子付近の琥珀などもそうです。そして重要なのは、それが必ずしも独占的ではなく、結構あちらこちらに行き渡っていること。海なしの長野県には太平洋の貝、北海道にはいないはずのイノシシの牙。翡翠も琥珀もそうですが、八ヶ岳近辺の絢爛豪華な土器なんかも、交易品のように運ばれていたと、私は考えています。
 で、私は思うのです。縄文の連中、結構上手くやっていたんじゃないかなと。
 要するに、それぞれが違う生活を送りつつも、物が行き交い、巨視的にみれば土器の変化すら全国的に同一歩調を取るという社会をどう捉えるかですが、私は、結構上手くやっていた、と思うんですね。もちろん、喧嘩も争いも憎しみもあったでしょう。衝突もしたでしょう。でもそれでお互いが潰し合わないくらいには、上手くやっていたんじゃないかと。
 今回のことだって同じです。青野氏が私を誘ってくれた。私は嬉しかった。彼にお礼をしたい。旨いものご馳走したい。それは今じゃなくても、いつか必ず…と思うわけです。
 その連鎖が、私のいう「上手くやっていた」ってことなんですけどね。八ヶ岳と噴火湾で直接的な繋がりは無かったかもしれませんが、そんな連鎖の上にどちらもあったのかな、なんてね。
 そんなことが、来て頂いた方に伝わったかどうかは分かりませんが、まぁともかく、楽しかったとは思いますよ(自画自賛)。

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戦いの後の固い握手。やらせだ!


 そして、そんな講演・対談の翌日が「縄文まつり」本番でした。しかし、前日の伊達市の皆さん+謎の美女学芸員軍団とのアルコールが残り、実はなかなか不調の私。しかも北海道とはいえ、気温は結構高い。これは、私のダメパターン。しっかり具合いが悪くなるパターン!
 それでも働いている皆さんを前にして、自分だけ休むのも気が引ける。ここは、必殺「仕事してるふりの術」でしのぐか、などと企んでいたところ、
「いや、藤森さんは休んでいて下さい」というスタッフの方々の優しい言葉。しめた!私は躊躇することなく「では、お言葉に甘えて…」なんて言いかけたその時、目の前に白い物体が飛んできました。
「こ、これは? 軍手!」投げてきたのは当然、やつ、青野。しかも、笑顔。こうして、私もスタッフの皆さんとテント張り作業に。おかげでいい汗かきましたとも。

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 なお、このお祭りについては、私は半分しか見ておりませんし、もう充分この記事長いし、ここでは割愛させて頂きます。関係者の皆さん、ごめんなさい。でも、頑張る青野さんの後ろ姿を見てあげて下さいね。

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というわけで、お土産の一つが、軍手。

 
 最後に、個人的な感想を含めて。
 今回、多くの方に長野の縄文文化を知って頂けたことや、北海道の素晴らしい貝塚、素晴らしい遺物、そして素敵な方々と親交を持てたことなど、嬉しいことはたくさんありましたが、個人的に一番だったのは、対談のあとのお酒の席で、青野氏に近い方々が「仕事であんなに楽しそうな青野さんを見たのは、久しぶり、いや初めてだったかも」とおっしゃっていたこと。
 思えば、同じような境遇(2人ともお受験で、ゲフン)で夜間の学部に入り、昼間発掘夜授業の毎日、そして同じ時に大学を卒業し(2人とも院試で、ゲフン)、地方の市町村に就職して、置かれてきた立場は違うにせよ、きっと同じような苦労を経験して、それでも考古学にしがみつきながら、20年経って、こうして同じ場所で同じ想いで話が出来たことが、本当に嬉しかったです。
 別れ際、伊達紋別駅前で握手した時、年甲斐もなく、ちょっと、グッと来ました。

 帰路も、空港でボディチェックを入念にされたこと以外は問題なく、予定通りに標高1,300mのわが家に着きました。今度はここで、彼をもてなさないと。
 あ、でも待てよ、考えてみれば、やつは私たちがここに引っ越して来た数日後に、なぜか泊ってたな。まだ荷物も片付いていないし、カーテンさえ付けてない状態のわが家に!しかも「八ヶ岳の牛乳瓶が欲しい」(註1)とかいって、近所のスーパー梯子させられたし、なんだ、これでチャラだな、チャラ!
 などと、まだまだ縄文人の寛容さには追いつけないと思いながら、まぁまぁ上手くやっていける社会を目指そうと、そんなことを思ったのでした。

(註1)青野氏は、牛乳瓶コレクターとしても有名である。


【オマケ】
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 実は、密かに持っていった例のTシャツ。しかし着る勇気は出ず、頂いたスタッフTシャツと並べて撮影。今度はあれだな、旗だ旗、党旗作ろうぜ!
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